プールサイドの丸玉石タイル

大きさ比較と見え方の話をずっと書いてきたが、1号発射シーンでもちょっと気になることがある。

奥に見えるヴィラの白い階段も、プールの飛び込み台階段もスケールより大きいことは以前に書いたが、実際の画面はこのような止め絵ではないので、火を噴いて飛び上がっていくロケット1号の大迫力に目を奪われる。一連の発射シークエンスで高まる期待感と、発射で一気に盛り上がる炎と白煙のカタルシス。高い空へ突き進んでいく銀色の1号の雄姿。それが60年たっても心が躍る1号の発射シーンだ。

スライドするプールと実は巨大な飛び込み台

もう少し詳しく見ていく。

次はこの少し前、水をたたえたプールがスライドして1号格納庫の天井がオープンするシーン。

3秒足らずのカットだが、スライドするプール以外はアングル固定なので、プールサイドの情景が分かる。

この写真だけ見ると、そんなに大きなプールに見えない。飛び込み台の階段が大きさ認知の基準になっているからだ。せいぜい2mくらいの飛び込み台だ。

ところが右上隅に写っているベンチやチェアをよく見ると、飛び込み台の階段が巨大なことが判明する。階段1段がたっぷり椅子1個くらいの高さがあるからだ。

実際に映像を見ているときは、スライドするプールに目が釘付けになっているので、こんなことには気づかない。巨大な階段の飛び込み台は、富豪の別荘の優雅なプールを印象付けるためのアイコンにすぎない。以前にも書いた話だ。

それ、風呂場のタイルだよね

実はこのカットでもう一つ気になることがある。それがプールサイドの丸いタイル。

昭和な同朋諸君は、この青や白の丸いタイルを見てピンと来たと思う。

そう、これ、昭和の風呂や洗面所などの水回りでよく使われていた、レトロな丸玉石モザイクタイルなのだ。

これに一度気づくと、優雅なプールサイドが、日常じみた洗面所サイズのタイル張りにしか見えなくなる。
これはタイルに見えるというより、当時実際によく使われていたタイルそのものだろう。

放送時に小さなブラウン管テレビで見ていた時は、たぶん気が付かなかったと思う。

特撮にはいろんな日用品が流用されている。有名な1号発射サイロのレモン搾り器以外にも、あちこちにある小物を探すのも楽しい。

この見覚えあるタイルを使ったおかげで、60年後に止め絵で舐めるように見ているブンドド親父には、プールが小さくいかにも特撮用セットに見えてしまう。

ところが、このことは撮影スタッフも承知していたようだ。次の画像をご覧いただきたい。

プールサイドの巨大なタイルです

プールサイドでくつろぐ、ゴードン、ミンミン、バージル。言っておくが男子寮物語ではない。ちゃんと番組内の1シーンである。先ほどのプールがスライドするシーンの右上のベンチあたりの場所だ。

ここで彼らの足元に注目。

青やグレーの巨大な丸い敷石が敷かれているではないか。しかもこのサイズ、流用した丸玉石タイルのスケールをそのままマリオネットに合わせて拡大している。ちゃんと辻褄を合わせてあるのだ。

「風呂タイル使ったろうって? 彼らの足元見てください、ちゃんとこういうサイズの床材ですよ」

ニヤリと笑うスタッフの顔が目に浮かぶ。

これはどうかすると、マリオネットの足元にも同じ丸玉石タイルを敷き詰めて撮影してしまうところだ。それをわざわざ、風呂タイルを模した巨大なタイルを作ってプールサイドに敷きつめる。それによって、セットの中で流用した風呂タイルを、劇中では巨大なタイルとして成立させている。

60年前にこれを作ったスタッフに座布団1枚!

しかしこうやって細かく見ていくと、たくさんあるスケールのぶれはテキトーな仕事のほころびなどではなく、ちゃんと目的を持ってコントロールされていたことがだんだんわかってくる。

主要メカを巨大に見せるというのもその目的の一つだし、一目で分かる優雅な富豪の暮らしを表すアイコンだったり、シーンによって巧みに使い分けられている。スケール感を出すにはなんでも細かく精密に作りさえすればよいのではない。時として細部で嘘をついても、動画として画面全体で意図したものを表現できればそれでよし。

サイズという数字で表現できるものをあれこれ考察してきたが、これ以降は何を見せたいか、何を伝えたいかという視点で分析・深堀りしていこうと思う。

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