映像には出てこないが、設定資料によると軌道上のサンダーバード5号には水耕栽培の設備がある。
また、トレーシー島の洞窟にも水耕栽培場があり、脱塩装置で海水から作った真水を流して、果物と野菜を栽培している。こちらはキラノの仕事だ。
どちらも孤立した環境で自給自足を目指すものだ。
現実では、ISSでも植物栽培の実験は行われている。左はNASAがVEGGIEと呼ぶ野菜生産システム。右の画像は、Plant Habitat-02で二十日大根を育てる野口宇宙飛行士。
栽培の目的は「宇宙飛行士の食生活に新鮮な食材を提供し、軌道上の実験室における幸福感と健康状態を向上させること」とある。単なる食材調達ではないのが素晴らしい。


ということで、今回は本編には描かれなかった5号での水耕栽培黎明期のお話。
ゴードンがB-52のスロットルレバーを見て「エノキダケか」と言った続きになります。
*******
「キノコなら、光はさほどいらない」ジョンはつぶやいた。
これから5号の水耕栽培を本格化させていくのだが、何から始めるかずっと調べて考えていた。
だが、エノキダケは水だけでは育たない。菌床となる有機物、栄養分が必要だった。
「水耕栽培とは、別の設備になるな……」
その様子を見ていたブレインズが声をかけた。
「ジョン。君はいま、密閉された宇宙ステーションへ菌類を持ち込もうとしているんだよ」
「……何か問題でも?」
「大ありだ」ブレインズは椅子を引いてジョンの隣に来た。
「光はさほどいらないし密集して収穫できる。宇宙向きだと思わないか?」
「酸素はいるよ。二酸化炭素も出す。植物じゃないんだ」
「まあ栄養は必要だけど」
「胞子も飛ぶ。菌床には別のカビや微生物が入るかもしれない。飛ばした胞子が機材の中に入り込んだら…」
「君はいつも、結論を急ぐな」
「もう一度言うけど、君がエノキを持ち込もうとしている場所は、密閉された宇宙船だよ」ブレインズは続けた。
「光合成している植物は、トータルで二酸化炭素を吸収して酸素を放出する。5号の中で生命維持装置の一部になれる。持続可能なんだ。でもキノコは」
「そうか、キノコは動物を飼っているようなものだな」
食用になるとはいえ、光合成する植物とは根本的に意味が違う。
「本当にやるなら、5号の空調や水耕栽培ブロックの気密から本格的に手を加えることになるけど、……他にも何が必要か聞きたい?」
「いや、その必要はない」
ジョンは納得してまた調べ始めた。
しばらくしてジョンは画面を見つめて声を上げた。
「これは…」ジョンは画面を拡大した。
1985年、日本のつくば科学万博。一本の苗から広がったトマトの木は、一万三千個もの実をつけていた。
「40年以上も前に、ここまでできていたのか……」

ジョンはしばらく画面を見つめていた。
「うん、これだ。今は一万個はいらないけど」


コメント