男子寮物語 第11話「皮膚」

2号の尾翼は特徴あるV字尾翼だが、模型を囲んで動翼が見当たらないという話が盛り上がっていた。

ゴードン「ラダーベーター? そんなの最初から動くに決まってる。みんな見落としてるだけだ」

ブレインズ「図面にはちゃんと書いてあるよ」

バージル「……俺、何十年も乗ってるんだけど」

ブレインズ「君が直接動かしたことはないからね。飛行制御が自動でミキシングしてる」

バージル「…………」

ゴードン「ほらな」

そして模型を見たミンミンが、

「じゃあ、なんで今まで筋がなかったの?」

しばし全員沈黙のあとブレインズが口を開いた。

「あの、それは動翼の隙間を最小限まで追求して、無駄な空気抵抗を抑えるため、ヒンジ部には――」

「ちゃんと飛んでりゃ何だって良いだろ」とさえぎるゴードン。

「……まだ説明の途中です」

「何10年飛んでると思ってるんだ。十分だろ」

「俺はちょっと聞きたい」と目を輝かせてバージル。「今までなんとなくやり過ごしてた」

「兄さんはちゃんと操縦できてるからいいんだよ」

ブレインズとバージルが技術論をごちゃごちゃ言い始めたので、ゴードンが面倒くさそうに二人を遮った。

「2号には皮膚があるんだよ」

「……皮膚?」

「そう。中に硬い動翼があって、その継目を柔らかい皮膚がツルッと包んでるんだ。だから外から見ても継目がない」

「あの」ブレインズが口を開きかける。

「イルカとか泳ぐの速いだろ。あれと同じだ」

一同、ふたたび沈黙。

バージルが目を丸くしてゴードンを見る。

ブレインズも何も言わない。

ゴードンは満足そうにうなずいた。

「ほら。解決した」

「その話、あながち間違いでもありませんよ」とブレインズ。

「ただし音速を超える領域では衝撃波で表皮が波打つ現象が現れて、最悪剥離か破断。あと熱をどう逃がすか――」

ゴードンが背伸びをして立ち上がった。

「あー腹減った。今夜はサーモンのステーキが良いな」

「まだ表皮の話が―」とブレインズ。

「皮はパリパリに焼いてくれ」

一同三度目の沈黙。

「……皮膚の話はどうした」真剣に聞いていたバージルが言う。

「だから皮の話してるだろ」

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