国際救助隊の勤務体制―5号の場合

5号の任務

サンダーバード5号の任務は、静止軌道上でひたすら救難信号を傍受すること。救助活動の初動を左右する重要な機能だが、通信という静的任務のため他救助機とは根本的に性格が違う。

ここでの勤務は基本的に1か月交代。ワンオペ勤務のため、睡眠や休憩を取りながらの24時間待機だ。

その実態をよく表しているのが、第27話「海上ステーションの危機」

サンダーバード 第27話「海上ステーションの危機」より

5号で寝ていたジョンが、自動的に選択傍受された緊急通信で起きるシーン。

明かりも消さずに雑誌を見ながら寝落ちしているように見えるが、ちゃんとパジャマを着ている。1か月毎日のことなので、仮眠では体がもたない。寝ぐせで髪の毛が逆立っている珍しいシーンだ。

この一連のシークエンスが興味深いので、映像分析しておく。

右の画面では無人のコンソールで通信が録音されている。テープレコーダーが回っていることで録音中を示している。現代なら「REC」というアイコンかライトが点灯して録音中を表すところだ。

コンソールのある向こう側はジョンが寝ている部屋。動画だとよくわかるが、こちら側に漏れる影がしきりに動いており、起きたジョンがガウンを着ていることを表している。

マリオネットで着替えをさせようと思うととんでもなく大変だが、影だけを写すことで表現している。

視聴者は、動く影と回るテープレコーダー、救助要請の無線音声だけで今起こっていることを理解できる。なかなか優れた演出だ。

地上でも24時間待機

一方、トレーシー島ではどうか。

こちらも当然、24時間待機。救助に昼夜の区別はない。というか、世界中を守備範囲にしているので昼夜は関係ない。

ジョンからの通信で、この日当直のスコットがデスクでのうたた寝から目覚める。

サンダーバード 第27話「海上ステーションの危機」より

眠そうなスコットも髪の毛が爆発しているが、髭が伸びているのにも注目。これも珍しいシーンだ。

そして5号で起きてガウンをはおったジョン、パジャマの襟が片方だけ出ているという芸の細かさ。
すぐにブレインズも起きてラウンジにやってくる。

このように国際救助隊は、軌道上でも地上でも基本的に24時間待機である。

違いは、地上はジェフと兄弟4人にブレインズが交代で当直をしていること(おそらくミンミンも)。しかし通信を受けてすぐに出動しなければいけない。特にこの日当直のスコットは、まともに寝ていない状態で何分か後に真っ先に1号で出動で、相当きついはずだ。

救助要請は毎日ではないが、予測も不可能。それにトレーシー一家だけで回しているので、出動となればジェフ以外の全員が出ていくこともある。シフトがどうこう言える人数ではない。過酷そのものだ。

5号の居住環境

過酷な勤務状況の国際救助隊だが、島にいる間は、緊急出動に備えてリラックスする設備も環境もある。

しかし閉鎖空間の5号に1か月一人でいる勤務中はどうか。まず5号の船内を設定資料でじっくり見てみる。

「大図解サンダーバードテクニカルマニュアル」より

5号には人工重力発生装置があり、資料には「地球標準重力で、調節可能」とあるので、1Gを再現できるということだ。これがサンダーバードの世界で一番最先端の技術だろう。劇中には宇宙船は何機か登場するが、船体を回転させて遠心力で疑似重力とする描写は出てこない。

この技術が将来実現可能かとか現実の延長線上にあるかどうかはさておき、軌道上の長期滞在者にはいろいろな意味で圧倒的に快適であることはまちがいない。衣食住の行為にとって重力は非常に重要なのだ。

円形部分の船体は3層構造になっている。最下層が機械スペース、最上層は世界中の救難信号を受信するモニター制御室。そして中層の居住エリア。

この居住エリアが想像以上に広く快適なのだ。
居住性に関する項目を図中番号で解説すると以下の通り。これも設定資料からの引用。

⑧医療区画。
㉓5号の駐在員用書斎兼宿泊設備。
㉔ラウンジ。
㉕移動式電子娯楽装置のコンソール。映画のライブラリーや音楽、ゲームを楽しめる。
㉖このドアから、研究室が付属した宿泊デッキ、予備寝室区画、収納室、水耕栽培区画へ行ける。
㉗気密式シャワーユニット。
㉘衛生設備。無重力状態で使用できるシャワーとトイレが付属している。
㊳水耕栽培に接続した生命維持装置の発電機。隣接の核融合炉から電力を得ている。

ここでは5号本来の通信機能などに関することは割愛している。

図解で一目見てわかるのは、ラウンジの広さ。2号の近代化改修で苦労して居住区をひねり出したのが嘘のようだ。

そしてラウンジにある移動式エンタテインメント装置。必要に応じて部屋に持って行ける。
これは現在の技術で改修するなら、モニターさえあれば艦内ネットワークでどこでも利用できる。
もしカラオケ用の大きなスピーカーとマイクがついているとしたら、さすがにそれは各部屋に標準装備されていないだろう。

㉓の駐在員用書斎兼宿泊設備だが、冒頭の画像で紹介した、上層階にあるコンソール横のベッドとは別の部屋。中層階にある部屋はちゃんとした個室で、コンソール横は勤務中の仮眠室なのだ。ジョンは撮影の都合でコンソール横に寝かされていたのではなかった。

この個室だが、㉖にも予備寝室区画とあり、同じ著者の別資料によると全部で6室あるとされている。ジョンとアランはもちろん、ブレインズあたりも専用の部屋を割り当てられているだろうが、かなり余裕を持った設定だ。

㉗の気密式シャワーユニットとは別に、㉘で無重力状態で使用できるシャワーとトイレがついているのも抜かりない。重力発生装置のトラブルやメンテナンスも最初から考慮されている。

そして設定資料を見て初めて知ったのが、㉖水耕栽培区画の存在。

もともと創設者ジェフの実家はカンザス州の小麦農園。そして島の洞窟には水耕栽培場を設けて野菜と果物を栽培しているくらいだから、補給が月に1度の5号に、新鮮な食料を少しでも自給できる水耕栽培区画があるのも不思議ではない。島でも生鮮食料品が自由に補給できるわけではないのと同じだ。

そして㊳水耕栽培に接続した生命維持装置の発電機。水も酸素も二酸化炭素も無駄なく循環させるシステムだ。

実は以外に快適だった5号

暗い宇宙空間に浮かぶ5号で一人、いつ来るかもわからない救難信号を待って孤独に耐えるジョン。子供の頃から大変な任務だなあと思っていた。

ただ、子供の頃は5号のプラモデルは買えなかったし、勤務実態を真剣に考えることもなかった。

2号の改修で考察していても分かるが、こういうメカはどうしても実用・機能優先になりがちだ。
だから、地味な任務で孤独に耐えているジョンやアランたちが、少しでも快適に過ごせるようにいろいろな改修案を考えていた。

未来の宇宙ステーションとして5号を再考証してみよう。そう思って設定資料を開いた。

だいたいもう考えてあった。

5号の機能は驚くことが満載だ。その中で今回は居住性について考察してみた。

ほとんど先に設定されていたのだが、いくつかはもっと快適に過ごせるアイデアがあるので、次回はそれを中心に、改修案を練っていく。

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