2号の居住区に二段ベッドが設置されて、兄弟は子供のようにはしゃいでいた。
小さい頃から自分の個室で大きなベッドが与えられていたから、そんなものは初めてだったのだ。
「僕が上の段に寝る」「いや、年上の俺に優先権がある」
などともめてジャンケンで決めたり、
「こらゴードン、上で暴れるな。それからゴミを下に投げるんじゃない」
任務中なのも忘れて、束の間の睡眠時間を楽しんでいたのは最初のうちだけだった。
十分なスペースがないところに設置した二段ベッドなので、なにしろ狭い。
長さはともかく、幅72cmというと下手に寝がえりをうつと落ちてしまう。
そして下の段は天井が低い。寝たまま手を伸ばせばべったり届く。
さらに下の段は風通しも良くない。換気口はあっても小さくて暑い。
下の段の利点は落ちても安心なことと、天井にピンナップを貼れることくらいだ。
それから居住区と言っても、事務作業や打ち合わせの会議室も兼ねているので、誰かが寝ているすぐ横で作業を続けることになる。カーテン1枚引いただけでは多少薄暗くなる程度だ。
そんなある日。救助の帰りに上の段で寝ていたゴードンが
「あああもう!」と叫ぶなり、マットレスを床に放り投げた。
「うわあ、何してるのゴードン!」驚くアラン。
「俺は今日はここで寝る!」そう言って下段のアランの隣にマットレスを並べた。
アランはベッドの上だが、高さ20cm程度なので、床に直置きゴードンとさほど変わらない。
「ああ、床は広いなあ。ほら、一緒に食べよう」
ゴードンはそう言うとベビースターラーメンを取り出した。
しばらくの間、居住区に二人の話し声と笑い声、ポリポリと食べる音が響いていた。
帰還した後、ミンミンが掃除に来て絶句した。

「それで、誰が勝手に床へ下ろしたの?」
「ゴードンだよ」
「アランも手伝っただろ」
「僕は下で受け取っただけだよ」
「じゃバージル?」
「バージルはずっと操縦してたから、疲れて寝るってヴィラに上がったよ」
「スコット。あなたがいてなんでこんなことに」
「いや、俺は今来たところで…」
ミンミンはため息をついた。
「もう誰でもいいから、とにかくマットレスは元に戻しておいて!」
翌日。早く終わった任務の後。
「アラン、お前もこっちへ来いよ」
ゴードンとアランは床にマットレスを並べて、お菓子を食べながらおしゃべりを始めた。
その日は2号のコクピットで遅くまで整備と打ち合わせをしていたバージルとスコット。床に並んだ2つのマットレスと二人の寝顔を見て、
「なあバージル、今夜は久しぶりにもっと話でもしないか」
「いいよ。兄さんはいつも1号で、現場では顔を合わせないこともあるしね」
二人はズルズルとマットレスを床に降ろした。
こちらはお菓子を食べて騒ぐわけではない。部屋を暗くしてからぽつぽつ話し始める。
子供の頃のこと、父親のこと、今日の任務のこと。
普段ならわざわざ口にしないような話が、横になって天井を見ながらだと不思議に出てくる。
そして翌朝。
「ちょっと!…」
ヴィラで兄弟の気配がしないので降りてきたミンミンは、叫びかけてやめた。
居住区の床に敷き詰められた4つのマットレス、安らかな寝息を立てている兄弟たち。
ミンミンは何も言わずにそっと居住区をあとにした。
そして最後にもう一度並んだマットレスと兄弟を振り返って見た。
このことはジェフには言わないでおこう。
ミンミンはそう思った。


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